リトアニア ヴィタウタスマグヌス大学





リトアニア ヴィタウタスマグヌス大学 

佐賀大学農学部応用生物科学科 池山裕一郎

 
●はじめに

池山裕一郎です。リトアニア共和国のカウナス市にあるヴィタウタスマグヌス大学に交換留学しています。こちらに来て2ヶ月が経とうとしています。この2ヶ月はハプニングの連続で、落ち着かない日々を過ごしたように思います。楽しく新鮮なことに加え、カルチャーショックといえるようなこと、理不尽なことも経験しますが、生活力がつき、打たれ強くなれたように思います。



●大学生活

リトアニアでは、主に自分の専門に関わる授業、教養科目の授業、言語に関わる授業を受けています。教養科目に関しては、日本の大学と同じように座学の授業、言語科目に関しては、145分が週に4回、190分が週に2回、午前中にあります。専門科目の授業に関しては、座学の授業と、実習の授業に分かれています。実習の授業では、研究室で実際のサンプルを観察する活動や、統計ソフトを用いてデータ分析をします。専門科目の授業の内容は、日本語では理解していることでも、専門用語を英語で知らなければ、授業についていくことができません。そのぶん、他の人よりも理解に時間がかかります。それぞれの授業における課題は、あるドキュメンタリーに関するロングエッセイや、論文読解など、多くの時間を必要とするものもあります。毎回の授業はたいへんだと感じることもありますが、それは今まで受けてきた授業との、流れの違いによることも多いです。慣れてしまえば苦しい、ではなく興味深いという感情に変わっていきました。
    学期初日のセレモニーの行進






●日常生活

こちらの留学事情として、今年度から前年度と比べたいへん多くの留学生を受け入れるようになったそうです。そのため、大学は今年の7月に新しい学生寮を購入しました。ほとんどの留学生がその寮ともう一つの寮で生活しています。市街地に徒歩で行くことのできるバルティアという寮と、市街地からバスで30分ほどの場所にあるアカデミアという寮があります。バスは一度の乗車に、学生料金0.50.7ユーロほどで定期券を購入するとより安く乗ることができます。アカデミアの寮は、はじめは設備が整っていなかったために評判がよくありませんでしたが、改善されてきています。周囲が自然に囲まれ、のどかなところです。また、アカデミアから歩いてすぐにキャンパスが一つあり、そこには学生向けのジムや運動場があります。週に23回程度の頻度でスポーツアクティビティが行われており、バスケやテニス、卓球など自由に参加できます。現在はウクライナ人のルームメイトと穏やかに暮らしています。共同のシャワールームを使うブロックメイトは中国人で、さまざまなバックグラウンドの人と生活できて楽しいです。アカデミアにおける生活は、トラブルは絶えませんがむしろ楽しくなってきました。寮の受付の方はよくイライラしており、理不尽に怒られるために他の学生からの評判も良くありません。私もよく怒られるために、リトアニアが少し嫌になりそうでした。最近は機嫌のいいひと、悪いひとが認識できるようになってきました。カウナスの街では旧市街など、歴史のある美しい町並みが残っている場所や、大きな公園などがたくさんあるため、心地よくくらすことができます。

歓迎パーティーに行く途中





●所感

リトアニアに来て良かったと思える点があります。それは、留学生の多様性です。多くの留学生はヨーロッパからはもちろん、アジア全域、北部アフリカ、アメリカからも学生が来ています。そんな留学生との交流はもちろん、その人たちの国のことについて生の声を聞くことができることがうれしいです。また、コミュニケーションに関しては、ほとんど英語で行われています。お互いが知っている言語として一番多いからです。リトアニアの学生も含め、この国では第二言語として英語を使う人がほとんどです。英語以外の言語も履修したことがあり使いこなせるひとも多いです。他の国の人たちがどの程度のレベルで英語を話すのか知ることができる、ということは第二言語に求められるレベルを知ることができた、という点でとても有意義なものであったと感じています。ネイティブレベルでなくとも気にせず使って良いのだ、というように外国語に対する心理的ハードルを下げられたことがモチベーションにつながったからです。

リトアニアにきて考えることは、たくさんあります。たとえば、考え事をしながら道を歩いていると突然、すれ違う人からよくわからないことを言われることがあります。その裏には、自分がもしかしたら侮辱と受け取られるようなジェスチャーをしていたことが考えられる(そのときはあごに手を当てていました、あごをかくジェスチャーはいくつかの国では消えろ、という意味です)し、その方がお金を求めていたのかもしれません。また、あるときパソコンをなくしたのですが、拾い主がSNSを通じて名前を検索し、連絡してくれたことがありました。現地の警察署に行きましたが、犯罪と関わっていない落とし物を収集することはないと言われ、途方に暮れていたためにたいへん喜びました。拾い主の方は、とてもフランクな方でしたが、落とし物を拾った報酬を要求してこられました。調べてみたところ、Lost and found feeといって、拾った人は持ち主に報酬(落とした物の価値の520%の現金など)を要求する権利があるようです。このようにここに来たからこそ考えること、経験に無関心でいないことは大切にしたいと思います。




●おわりに

日本人の学生と、とくにヨーロッパ諸国の学生の留学のとらえ方には隔たりがあるように感じます。それは、ヨーロッパにおいてErasmusと呼ばれる1学期もしくは2学期他の国へ交換留学するプログラムがポピュラーであるからです。また、英語教育や、国内の人種多様性の違いということも要因としてあると考えます。大学に入ってすぐのころ、私は留学というものをたいへんな大事のように捉えていました。しかし、重要なことは留学先でどのようなことをするか、だということを留学経験者の方から聞きます。自分がマイノリティとなる環境で生きる、というそれだけで得難いものです。この国にいる留学生には仕事をやめて来た人も、27歳の人も、元軍人の人もいます。留学すると学年がずれてしまうかもと不安な人もいるかもしれませんが、そういった周囲の要因に悩んでいるのであれば、きっと抜け道や解決策は存在するので探してみる、もしくは開拓してみることをおすすめします。これから留学するよ、という方は自分の理想とする留学生活を想像し、数値など具体的なものに現地で落とし込むことをおすすめします。留学すれば、成長ができる、英語力があがる、ということではないので、自分が現地でどう生きるのか考える時間をとってみることは、留学する上で大切かもしれません。また、最後にお伝えしたいことは、留学する、ということはその場所で生きる、暮らすということですから、その場所にこちらから順応していく姿勢が必要です。環境に関して日本と比較するのでなく、その違いに順応していく過程も貴重な経験として味わってほしいです。私も、まだ留学中の身であるため、しっかりと自分と日々の事柄に向き合って生活していきます。

 


学部キャンパス近くの公園 
   植生の違いも見ていて楽しい





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