ドタバタ!フィンランド日記



 「え!フィンランド!?めっちゃ寒いんちゃうか?ほんまに大丈夫か?」
 私の留学が正式に決まってから、父は何度も同じ言葉を繰り返した。きっと父の中で「フィンランド=寒い」というイメージしか無かったのだろう。
 皆さんはフィンランドと聞いて何を連想するだろうか。サンタクロース、オーロラ、ムーミン、福祉など、ぼんやりとしたイメージはあるものの、フィンランドでの生活を具体的に想像出来る人は少ないのではないだろうか。私も以前はそうであった。だからこそ私はフィンランドを留学先に選んだ。「一度きりの大学生活。何か他の人とは違うことにチャレンジしたい!」そんな変わり者の私の好奇心を満たすのに、フィンランドは絶好の留学先であった。
 日本人にとってあまり馴染みが無い国、フィンランド。この機会に少しでも多くの人にフィンランドの魅力をお伝えできれば幸いである。

ムーミン博物館


1、気候

 私の父がそうであったように、皆さんが一番気になるのは気候だと思う。私は1月からこちらに滞在しており、-15℃の世界も体験した。フィンランドの冬はとても寒くて、とにかく曇りの日が多い。”I miss the sun.”と毎日のように友達と話していたものだ。
 しかし私はそんなフィンランドの冬も好きだ。たまに晴れた朝には、キラキラ輝くダイヤモンドダストを見ることが出来る。湖でスケートをすることも出来るし、スキーも楽しむことが出来る。アパートの前に友達と大量の巨大雪だるまを作り、翌日筋肉痛で動けなくなったこともある。
 日本との気候の違いに戸惑うことも多々あったが、沢山の友達のお蔭で私はフィンランドの冬を満喫することが出来た。幸運にも私は1月から12月までここに滞在することが出来るため、全ての季節を楽しむことが出来る。夏になるとフィンランドがどのような表情を見せてくれるのか、今からとても楽しみである。

 
大学前の湖の夜景

フィンランドにも春の気配が…♪



ガイドブックに載っていそうな北欧らしい1


2、生活

 私は現在チェコ、ボスニア出身の留学生と3人でフラットシェアしており、学校へは毎日自転車で通っている。ユヴァスキュラは自転車の街として知られているようだが、何処へ行くにも坂道が多く3か月以上経った今も息を切らしながら必死に街中を自転車で走り回っている。外食は高くつくので自炊が基本だが、学食なら2.6ユーロでお腹一杯食べることが出来る。ただし私のように調子に乗っておかずを取りすぎると追加料金を請求されるので注意しなければならない。
 授業は全て英語で行われる。初めのうちはなかなかついていけず、宿題の内容すら理解できないという場面もあった。授業後に先生や隣の席の人を呼び止め「もう一回説明して欲しい」とお願いしたことも多々ある。幸い皆とても良い方で、私が理解できるまで何度でも説明してくれた。
 授業以外の時間はジムで死ぬほどランニングをしたり、フィンランド人に交じって日本語の授業に飛び入り参加してみたり、最近は学外で様々な障害者スポーツの練習にもサポーターとして参加している。
 フィンランドは天気の優れない日が多いので、空き時間は家にこもるのではなく外へ出て上手に気分転換する必要がある。留学中は日本語を意図的に避ける人も多いようだが、skypeで家族や友人とお喋りしたり日本のテレビを見たり本を読んだりすることもモチベーションをキープする上でとても大切だと思う。

 
車椅子バドミントン


ぶらりタンペレ一人旅

酔っ払い3人娘(私のフラットメイト)

美味しいものを沢山食べたイースター休暇



3、世界から見た日本

 こちらに来てから「日本って凄い!」と感じることが多々ある。ユヴァスキュラ大学には沢山の国から留学生が来ているのだが、日本に興味を持ってくれている人はとても多い。中でもアニメや漫画の人気は絶大で、”I’m from Japan.”と言うだけで握手を求められたこともある。「日本語を教えて欲しい」と頼まれることも多く、いつも快く引き受けるのだが、これがなかなか難しい。「漢字とひらがなとカタカナはどう使い分けるの?」「どうして同じ漢字なのに読み方が変わるの?」等、今まで考えたこともなかったような質問をされる。学ぶ側だけでなく教える側も必死だ。それでも私の説明を理解してもらえた瞬間や、「あなたと出会ってより日本に興味を持つようになった」と言われた時はとても嬉しかった。彼らと仲良くなるにつれて日本人であることを誇りに思うと同時に、私も日本についてもっと勉強すべきだと感じた。


4、友達

 私はあまり人見知りしない方であるが、それでも日本を発つまではこちらで友達が出来るのかとても心配だった。
留学を目指している方に私から何かアドバイスが出来るとしたら、「何でもいいから趣味・特技を持とう!」ということだ。私の場合スポーツがこれにあたる。もともと体を動かすことが大好きで、こちらでもスキー、スケート等のウィンタースポーツに加え、バドミントン、フロアボール、ズンバ、ヨガ等、沢山のアクティビティーに挑戦している。中でもバドミントンは中学生の頃からずっと続けており、私の数少ない特技の一つである。初めてバドミントンの練習に参加した時、沢山の人に「コツを教えて!」と頼まれ、気付けば多くの人に顔と名前を覚えてもらうことが出来た。自分の特技を生かして友達の輪を広げられるなんて、こんなに良いことはない。英語にあまり自信がないのなら尚更だ。スポーツは言葉を超えたコミュニケーションツールである。こちらに来てますますスポーツが好きになった。

パーティーにて「はいチーズ!」

フレンドシップファミリーお宅訪問

Asian餃子パーティー

フィンランドタンゴ界の貴公子とパシャリ


5、留学がもたらしてくれるもの

 「留学生活はどう?」と聞かれたら、私は迷わず「めっちゃ楽しいよ!」と答えるだろう。しかし日本での準備期間から今日まで四六時中楽しい思いをしてきたわけではない。どちらかと言うと苦労と失敗の連続だった。
 佐大からユヴァスキュラ大学への派遣は私が第一号だった為、誰からも助言が得られないまま全て手探り状態で事務手続きを行った。更に出国直前に腸炎で倒れ、意識もうろうとする中緊急搬送され出発が約1ヶ月遅れた。授業は途中から参加させてもらうことになり皆に追いつくのはとても大変だったし、オリエンテーションで話された内容を約2日で一気に叩き込まれ、頭がパンクしそうだった。道を覚えるため慣れないスノーシューズで毎日雪道を歩き回り、到着早々身も心もクタクタだった。
 それでも私がここまでやって来られたのは周りの人にとても恵まれたからである。留学アドバイザーの先生は、私が途中からでも授業に参加できるよう各教科の教授に掛け合ってくださった。なかなか道を覚えられずにいる私を韓国、台湾人の友達が色々な所へ連れ出してくれた。心が折れそうになった時、沢山の友達や家族がSkypeで泣き言を聞いてくれた。本当に嬉しかった。
 外国で暮らすのは想像していた以上に大変だが、毎日少しずつ出来ることが増えていくのは凄く嬉しいし、自分に自信をつけることが出来る。そして何より、今まで当たり前だったことの大切さに気付かされる。私の語学力は相変わらずだが、それでも十分留学した値打ちはあったなと思える。
 これからも感謝の気持ちを忘れず「いい加減が良い加減」をモットーに私らしくマイペースに留学生活を楽しんでいきたい。Teen parhaani!




経済学部 経営・法律課程 4年 齋藤愛美

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