ヨーロッパ・ドイツへの留学



佐賀大学大学院工学系研究科電気電子工学専攻 修士2年の木原です。
私は今トビタテ留学JAPAN第五期生としてドイツ ジーゲン大学に昨年の9月から1年間の計画で留学をしています。
 
ジーゲンの町並み

私と留学について
皆さんは留学生に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。
多くの人がいわゆる「バリバリ」な人、つまり留学に対して熱心でバイタリティ溢れる人というイメージではないでしょうか。
これは事実だと思いますが、私はそうではありません。
どちらかと言うと私は積極的に外に出るような人間でもありませんし、今でもそうです。

私が留学した理由は単なる偶然と興味なのですが、同じように少しでも留学に興味があって、そしてそのチャンスを少しでも持ち合わせている方がいれば、「是非留学はすべきである」とお伝えしたいです。

では、どこの国がおすすめか?
ずばりヨーロッパ、そしてドイツでしょう。

ヨーロッパ的な地形のせいか自転車で走るのがとても気持ちがいい。

ドイツの大学
私の研究についてご説明をしますと、私は今ジーゲン大学の物理科にマスターの学生として所属しています。
ジーゲン大学は国立の総合大学で、規模としては佐賀大学よりも少し大きいかなという程度です。(ちなみにドイツに私大は2つしかないそうです。)
研究内容は粒子加速器の放射線検出器の研究で、学科名を見れば分かるとおり佐賀大学での研究とは全く関係がありません。
佐賀大学の修士論文にこれが直接関わることもありませんし、ジーゲン大学で学位を取るわけでもありません。

ですが面白いことにジーゲン大学にはFreemoverといって学位の取得を目的とせず入学をする制度があり、私もこれを使って学籍を取得しています。
この制度から分かるように、ドイツでは日本に比べ学問に関するキャリアの積み方が非常に多様です。学年と年齢は一致しません。
私はかなりのんびり進級してきましたが、それでも私よりも年齢の高い人が多数のように思います。
留学のために休学で卒業が遅れてしまうことを悩んでいる方はこれを見ると励みになるのではないでしょうか。

またドイツの大学に入学するにあたり一番驚いたことなのですが、ドイツは大学の学費が無料です。
これは留学生も対象になります。
正確には250ユーロほどの支払いが年に二回あるのですが、これは州内の公共交通機関が乗り放題になるチケットの料金なので実質授業料は無料です。

税金を収めていない留学生でも無料になるというのは衝撃的だったのでそれをドイツ人の教授に言ってみると、「当たり前じゃないか」と言われてしまいました。
私はこの感覚からドイツの教育に対する姿勢が見て取れるように思えます。

ちなみに先進国にも関わらずドイツの食費は爆安です。
東欧には敵わないかもしれませんが、西欧では随一だと思います。
私が今まで見た中で一番衝撃的なプライスタグは、骨付きモモ肉1キロで2.2ユーロ。セールではなく通常価格です。
ドイツは皆が使うものは安く、贅沢品は高くなっています。
例えばビールが水より安いというのは事実です。みんな湯水の如く飲むので。
逆に外食は高いです。レストランに入れば大体10ユーロ以上かかります。

このように学費は無料で食費は安いので、節約をすれば日本の大学に行くのもドイツの大学に行くのもそこまで金額に差はないかもしれません。
ちなみに私の月々の最低限の生活費は多くても800ユーロほどです。
この内420ユーロがフラットの家賃なので学生寮やルームシェアで家賃を圧縮できればもっと安く生活できます。
この金額さえあればドイツで学生になれると考えると、結構お得だと思いませんか?
金銭面で留学を躊躇っている方は一度計算されてみるといい発見があるかもしれません。

なぜヨーロッパ留学か
ドイツから視点を広げてヨーロッパの良い所をご紹介します。

よくある答えですが、ひとつ目は多様性です。
世界にヨーロッパほど多くの国が密集していて、かつ気軽に移動できる場所があるでしょうか。
ご存知かとは思いますが、シェンゲン協定加盟国間であればパスポートチェック無しで移動する事ができます。これは思った以上に強力です。
私の感覚では佐賀-東京とドイツ-フランスの移動はそんなに変わりありません。オランダ-ベルギーともなれば佐賀-博多の感覚です。

EUができて(最近は怪しいですが)ヨーロッパ統合が進んでいるといえど、国ごとの雰囲気の違いは十分肌で感じることができます。
そのような異国の地に電車や飛行機でものの数時間で行けるというのは他の地域ではまず無理でしょう。
特にドイツは他の国に移動が簡単ですのでオススメです。
 
ドイツから南仏までは飛行機で1時間。日本は意外と広い

そしてヨーロッパを推す一番の理由、それは文化です。
永らくヨーロッパは世界の中心であり、多くの近代文化がヨーロッパから始まっています。
つまりここには沢山の「本物」があるといえるのではないでしょうか。

実は私がドイツを選んだ理由の一つは、ヨーロッパに行けば世界最高のクラシック音楽の文化に触れることができるから、でもあります。
実際に今もジーゲン大学のオーケストラに所属して、聴くだけではなく演奏もしています。

クラシック音楽に関して言えば、紛れもなくここは天国です。
例えばベルリン・フィルハーモニーの演奏会を日本で聞くと何万円取られるか分かりませんが、ベルリンで聴けば学生8ユーロです。
ジーゲンはそこまで大きな町ではありませんが、毎週のように何かしらの演奏会があっています。
ドイツは公共交通機関が発達しているので少し足を伸ばせばどこかで名前を聞いたことがあるようなオーケストラや、ビッグネームの演奏会を気軽に聴きことができます。

文化、芸術に興味がない人もヨーロッパに滞在する機会があれば是非美術館、演奏会巡りをされてみてはいかがでしょうか。
 
ボンのベートーヴェンフェストにて

こんな名画ものんびり見られます

ドイツでの研究
本分である研究についても少し書いておこうと思います。

ハンブルクの研究所でのビームテス
 私は日本とドイツを含む多くのヨーロッパの国々の研究室の大きな違いの一つは、博士課程の学生に給与が支払われることだと考えています。つまりドイツの博士課程の学生は研究室とは雇用関係にあります。
そのせいか私の研究室は、若干「会社」といった雰囲気もあります。

また、研究室でのコミュニケーションは英語が基本です。
大学に限らずドイツでは若い人はほぼ英語が喋れます。他の国と比べてもその割合は高いようです。
もし研究中心の生活を送ればドイツ語を使うのは買い物の時くらいになるかもしれません。
私個人としては絶対にドイツ語を学んできた方がいいと思いますが、ドイツ語をほぼできない私でもやっていけているので、語学に自信がない人も研究に関しては英語がそれなりにできれば、まず問題ないでしよう。

最後に
しっかりとした計画を立てて留学に望んでいるわけではないので、具体的なことはあまり書けませんでしたが、ここに書けることは山ほどあります。
私の留学は思いつきで準備も不足していましたが、来てみるとどうにかなるものですし、発見は山のようにあります。
少し無責任ですが留学をするか悩んでいる人はとりあえず来てみて、それから諸々を考えてもいいのではないでしょうか。
遠い国に行けば発見があり、これまでの価値観を落ち着いて見直すことができます。
私はこういった経験こそが人生を豊かにするために必要なものだと信じています。

では、最後までお付き合い頂いてありがとうございました。
 
-10℃を下回っても意外と大丈夫。ドイツの家の断熱は本当に凄い

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