森と湖の国フィンランド



・はじめに

 Moi! 文化教育学部国際文化課程3年の草野遥礼です。私は2017年8月から12月までフィンランド・ユヴァスキュラ大学に留学していました。今回は、どうして留学先にフィンランドを選んだのか、そしてフィンランドでの暮らしについて紹介したいと思います。

 
ユヴァスキュラの街並み

・フィンランドにたどり着くまで

 「どうしてフィンランドなの?」この質問はフィンランドに行くまで、そしてフィンランドに行ってからもたくさん聞かれた質問でした。どうしてフィンランドなのか、正直に言うとその答えは「必然だったから」というのが一番です。高校生の頃から国民幸福度の高い北欧に興味があり、大学受験の際に北欧に留学できるかどうかで受験校を決めたため、自然と「佐賀大学に進学=留学先はフィンランド」という道のりが私の中にできていました。そうすると、「なんで北欧に興味があったの?」という次の質問が聞こえてきそうですが、その理由は「日照時間が極端に長い・短い、1年の半分程度は冬という厳しい自然環境にもかかわらず毎年発表される国民幸福度ランキングでは常に上位にランクインしているのが不思議だったから」です。教育や中小企業への支援、起業者への支援が手厚いことでも有名なフィンランドですが、あえて学問や社会制度を学ぶのではなく、フィンランドそのものについて知りたいと思い行ってきました。

Kesukustaの様子

 

・フィンランドでの生活

フィンランドと耳にすると、まず「寒い」「物価が高い」などといったイメージが浮かぶかと思います。人によっては「どこにあるの?」と、そもそも国の位置さえよくわからなかったり、逆に「ムーミンやmarimekkoの国」など詳しく知っている人もいるかもしれません。フィンランドは、ロシアの西側、スウェーデンの東側に位置する実は日本から一番近いヨーロッパの国です。そんなフィンランドでの生活は正直、不安もたくさんありましたが、実際の暮らしは想像していたほど難しいものではありませんでした。

大学にある森


  まず、私が暮らしたユヴァスキュラという街は、フィンランドの中部に位置し、森と湖に囲まれる小さな学生都市です。夏は5時から23時まで太陽が顔を出し、冬になると日照時間は5時間程度で気温も−20℃ほどになります。私が留学した時は、10月の終わりから雪が降り始め、12月になると積もった雪が溶けずにあたり一面ずっと銀世界が広がるようになりました。想像するだけで寒そうですが、日本と違って湿度が低く、内陸に位置する街だったからか風もないのであまり寒さを感じず、私は12月の−5℃の世界をジーンズにセーター、マフラー、現地のセカンドハンド(中古品店)で買った5€のダウンジャケットで過ごしました。日本からはるばる持ってきたヒートテックやカイロは、ほとんど使いませんでした。

12月のフィンランド

  また、物価に関しても、食品などの生活必需品はそれほど高くなく、野菜や肉、魚などは量り売りしているので必要な分だけを買うことができ、月々の生活費は佐賀で一人暮らしをするのと同じくらいでした。私は大学が提携しているKOASという会社が提供する学生寮に住んでいたのですが、家具家電付き、キッチン・バスルーム共用の2人部屋で、水光熱費込みの家賃を入れても月6~7万円程度で生活していました。一番心配していた夏から冬にかけてなりやすい季節鬱も私は特に問題なく、ルームメイトの韓国人やフィンランドでできた友人の中には現地のスーパーで5€ほどでビタミンDを購入して鬱になるのを防いでいる人もいました。

寮の自室

・大学生活

 大学に関しては、私はHumanities History and EthnologyEthnologyに所属し、民族学における研究方法に関する授業やフィンランドの歴史、フィンランド語やスウェーデン語の授業を履修していました。授業は英語で行われ、Ethnologyの開講する授業の形式や課題の量は日本の大学と似ているように感じました。そのため、私は特に課題や授業内容の理解に苦しむことはありませんでしたが、他学部の友人は膨大な量の課題やプレゼンテーションの準備に大変そうでした。
     
 ユヴァスキュラ大学のキャンパスは佐賀大学とは異なり、学部ごとにいくつかキャンパスが分かれており、授業によっては講義が行われる建物だけでなく、キャンパス自体も変わるということもありました。また、広いキャンパスだけに学食も充実しており、メインキャンパス内だけでも3つの学食があり、それぞれベジタリアンメニューがあったり、サラダが充実していたり、パンの種類が豊富だったりと場所によってメニューが異なり、さらに曜日によってもメインディッシュが変わっていました。価格もお財布にやさしく、学生証を提示すると主食にメインディッシュを3種類のうちの1つから選べて、サラダバーまでついて2.4~2.6€でした。

大学のカフェ

・フィンランドで暮らしてみて

 私がフィンランドで暮らしてみて感じたこと・フィンランド留学を終えて一番思うことは、取るに足るを知ることの大切さです。「冬の寒さは厳しいし、日照時間は極端に長かったり短かったりする上に自国で生産できる食料の種類に限りがあるため輸入に頼っている食品(果物など)も多い。それなのにどうして人々は自分の暮らしに満足できるのか。」留学を始めた当初は、フィンランドの幸せの理由を見つけるどころか、逆に疑問が深まるばかりでした。しかし、厳しい冬の到来を経験して、私が見つけた答えは「幸せになるのに多くのものは必要ない」というものでした。ありとあらゆるものが簡単に手に入れられる現代社会にて、少し手を伸ばせば容易にものが手に入るにもかかわらず、フィンランドで暮らす人々はそれをあまりしないように感じました。「長い暗くて寒い冬を生き延びるために暖かい部屋と温かい食べ物、そして大切な家族と友人がいればそれで十分でしょう。暖炉の前で編み物でもしていればいずれ春は来るわ。」まるでムーミンママが言いそうな言葉が人々の生活からは聞こえてきました。

凍り始めた湖


 5か月という短い期間でしたが、実際にフィンランドで暮らしてみて、どうやっても抗えない自然の力を目の前にして「静かに春が来るまで待とう。」「どうせなら春が来るまでこの寒さを楽しもう。」フィンランドで暮らす人々は長い冬をただ耐えしのぐのではなく、冬を楽しみながら春を待ち、短い夏を思いっきり楽しんだら、また長い冬を春が来るまで楽しむといった暮らしをしているのだと分かりました。完璧に幸せな国などどこにも存在しないのかもしれませんが、私がフィンランドで見つけた幸せの種は誰もがみんなのすぐそばにあるもので、でも当たり前過ぎて今の私たちの目には映らなくなってしまったものなのかなと思いました。

友達の実家でクリスマス

・さいごに 

 この留学を通して私は本当に素敵なことを学ぶことができ、かけがないえのない友人や経験を得ることができました。留学というともっと過酷なものを想像する人もいるかもしれませんが、何を学ぶかや何を得るかはその人次第であり、頭で考えるよりもずっと素敵な言葉にできないものを経験することができると思います。留学してみたいけど悩んでいるという人は、思い切って一歩踏み出してみてください。いましかできないこと、いまだからできることがきっとその先に広がっていると思います。


ムーミンワールドでムーミンと



<1€=135円 / 2018年2月現在>

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