ベルギー アントワープ大学 分子分光研究所


ベルギー アントワープ 大学 分子分光研究室

 

 

 

●自己紹介

 

こんにちは、

佐賀大学工学系研究科循環物質化学専攻2年の石井寿斗と申します。物理化学・生化学を主に専攻として研究をしております。

聞き慣れない分野だと思いますが、人の血液中や目の網膜に存在するタンパク質に関連したものを取り扱っています。

 

現在は、トビタテ!留学JAPAN(地域人材コース)11期生として、ベルギーにあるアントワープ 大学で、今年の9月中旬から研究留学をしています。日本で所属している研究室との共同研究の先駆けとして、留学しています。研究について簡単にいうと、最新の分光器と、レーザーを用いてタンパク質の機能解析を行っています。まだまだ実用的な応用研究には遠い技術なので基礎研究を積み重ねて、将来的に医療や工業製品の発展に繋がればと思いつつ研究をしております。
アントワープ大学の中庭から
実験室の様子

私にとって留学は今回が初めてで、まだ1ヶ月と数日しか過ぎていませんが、初めての留学に至った経緯、その間での生活、研究、自分なりに感じたことを素直に記そうと思います。そして私の投稿は海外や国際交流に関心を持つ方はもちろんですが、全く留学に興味を持たない人が少しでも留学に興味を持っていただければ幸いです。
 
 
●留学に至るまで
 
私は研究室に入るまでの4年間(1年留年しているので2回目の3年次)まで部活とバイトの毎日でした。入学当初は少し留学に憧れを抱いていたものの、成績も悪く、日々の生活に必死だった為、その気持ちは完全に消えていました。平凡に楽に日々を生きて、なんとなく進学・就職し、なんとなく卒業できれば良いと考えていました。
 
そんな考え方が変わり始めたのは現在の研究室に所属してからでした。成績が悪かった為、くじ引きで決まった研究室でしたが、研究室の先生や先輩が凄い人物で、研究だけでなく人とのコミュニケーションや行動力、発想がこれまでで最も尊敬できる人達でした。このような人達と関わっていると次第に、何か新しい物事に携わることや、様々な人と出会うことが楽しくなり、目の前の機会に対して、勇気を持ち一歩を踏み出せる様になりました。
 
私が同研究室で大学院に進学できる事が決まってからは、様々なセミナーや学会に積極的に参加し、国内外問わず素晴らしい研究者や学生に会う機会が増えました。それから様々な人の話を聞くうちにさらに多くの人と出会い、自分の価値観と視野を広げたいと考えるようになりました。
 
大学院に進学して1年も経たない頃に、研究室の先生から留学のプロジェクトがあるという事を知らせてもらい、その場で行くことを決断しました。この時、先のことは何も考えておらず、この機会を逃すともう行けないと思い飛び込みました。一年留年して大学院に進学し、就活を控えている立場からするとある意味無謀なチャレンジなので、おそらく学部生の時であれば絶対にしていない決断だと思います。尊敬できる先生や先輩、彼らに関わりを持つ人との出会いがあった事がこの決断に至ります。
 
幸いにも、研究室の先生が受け入れ先の研究室とのコネクションがあり、先生や国際化の方々の非常に手厚い支援のおかげで、今回の留学が実現しています。本当にありがとうございます。
最も影響を受けた時の研究室のメンバー


●留学準備について
 
私の場合、協定校ではない大学に受け入れてもらう為、ほとんどの手続きを自ら調べて行う必要がありました。特に苦労した事はVISAの取得で、ベルギーは移民が多いことから必要な書類が非常に多く、パスポートを含め13種類も必要でした。また、現地の住まいや受け入れ許可証などを発行してもらうために、受け入れ先とのやりとりを迅速で正確に行う必要があり些細なことでも連絡をする重要さを学びました。さらにヨーロッパでは、ほとんどの人が夏に休暇を取るため、準備の期間は十分に(最低2ヶ月)は取ることをお勧めします。
私が住む寮の外見、歴史を感じます。


金銭面に関して、多くの人は「留学は多額の費用が掛かるためハードルが高い」と考えているかもしれませんが、実際は多くの留学支援制度があり、そのハードルを下げてくれます。
私は、文科省と民間企業が連帯して学生の留学をサポートする官民協同のプロジェクト、“トビタテ!留学JAPANhttps://tobitate.mext.go.jp)”という留学支援制度により、返還不要の奨学金をいただいています。

この制度は数ある中でも特に魅力的で、奨学金の返済不要に加え、英語力が問われないプロジェクトがあります。留学に行きたい、今しか行くチャンスがない、しかし語学力が追いついていないという場合でも、想いが強ければ留学に行く機会をもらえます。私もその内の一人で、TOEICでさえ400点ほど(交換留学などのプロジェクトでは留学させてもらえない)しかありませんでした。
 
このプロジェクトはコミュニティも大きく、様々なバックアップもあるので、留学を考えている人に選択肢の一つとしてお勧めします。
 
 
 
●現地での研究
 
研究生活に関して、私が所属している所は分子分光研究室で、朝は8:30-10:30から、夕方は17:30-19:30までと日本での研究室とほとんど変わらない生活をしています。
 
日本で所属していた研究室と違うと感じた所は、研究室の全員が研究とプライベートのメリハリがしっかりしており、作業を始めてから帰るまで黙々と研究し、時間になると直ぐに帰ります。また、家族や友人との食事のため早めに帰ることや、週末の旅行のため平日に休みを取ることなど、プライベートに関して寛容な雰囲気があります。そのせいか、余計な精神的疲労は全くなく、休日はリフレッシュしている為、全員がいつも生き生きしている様に感じます。
いつも教えてくれるph.Dの研究生
知識量に圧倒されます。
メンバーは、教授2人、秘書1人、研究員1人、Ph.D.4人、Masterが私のみです。ここにきて驚いた事は、1つの研究室につき1フロア部屋が与えられていることです。この研究室は全部で約20部屋あり、様々な研究を行うためにとても良い環境だと思いました。
 
また、Ph.D.Masterの立場の違いにも驚きました。日本とは違い、ヨーロッパでは学部卒業後にPh.D.を選択でき、年齢や学年はほとんど同じであるにも関わらず、Ph.D.に対して課されるテーマや作業量が桁違いで、その全てに責任を問われ、私に比べるとはるかに多い知識量があります。
 
さらに、ベルギーではPh.D.を選択すると月に2,000 (24万円)の給料をもらう事ができ、企業からも欲される人材だそうなので、Ph.D.に対する価値観や能力が日本と全然違うと感じました。
 
この研究室に来てから、私の知識不足を痛感し、このままでは自分で研究を組み立てることもできないので、自分のテーマに関する論文を他の研究生に教えてもらい、実験を教えてもらう間で地道に知識を増やす様に心がけています。一つの論文を読み終えるとの人とディスカッションを行い、内容の擦り合わせを行う事で少しでも研究に貢献できるように頑張っています。
 
 
●現地での生活
 
まず、ここでの言語ですが、ベルギーはオランダ語・フランス語・ドイツ語が公用語で私が住んでいる地域はオランダ語圏です。しかし、大学が国際的な人材を集めるために、英語を共通語としているため、大学内ではほぼ全ての人が英語を話せます。これは大学に限ったことではなく、ベルギー国内でも英語が共通語とされているため、国民の大多数が英語を使う事が出来ます。おかげで私も拙い英語を使い、なんとか生活できています。
 
住まいは、キャンパス近くの留学生寮に住んでいて、共用のキッチン・バス・トイレを10人でシェアしています。ベルギーから近い国の留学生が特に多く、日本人は私一人でした。また、24時間空いているコンビニや、安く外食できるお店はないため、基本的に毎日自炊をしています。
 
私は人見知りをしてしまうのですが、友人を作りたいがために頑張って1時間ほどはキッチンに居るようにしています。しかし、周りも結構人見知りのようで、意外と部屋から出てこない人が多く、友人作りに苦戦している毎日です。

寮の仲間とワインパーティー
みんな研究生だそうです。

休日は街の散策や、寮の人と食事、ベルギー周辺国のトビタテ生と観光をしています。バスや電車で簡単に国を行き来できる所に感動しています。10月初旬には、ビール祭りで有名なドイツのミュンヘンに行ってきました。これまでTVの中でしか見たことのない場所に行ける事に興奮しています。
トビタテで知り合った友人と
初対面でもみんなフレンドリーでした。



また、地域人材コースとして留学しているので、これからの期間で佐賀県の海苔や日本酒を広めるような会を開こうと思っています。

 

 

 

●最後に

 

さてここまで拙い文章ではありましたが、研究留学のイメージが少しでも湧いていれば幸いです。

 

ここから現在の正直な気持ちを書きますと、

留学をしている人の体験談やその様子を聞くと、もともとの志が高くキラキラしている人ばかりで、まるで別世界の人のように感じると思います。が、必ずしも全員がそうではありません。

私は元々国際交流に積極的ではありませんでしたし、人とのコミュニケーションも苦手でした。人生の目標も特になく、無難に生きて一生を終えるのだろうと思っていました。

 

しかし、多くの出会いや環境の変化がきっかけで考え方や価値観が変化し、自分自身の成長に喜びや達成感を感じるようになりました。そこから新しい環境に飛び込む勇気を持てるようになり、留学という体験をする事ができています。

したがって、留学を迷っている方、全く興味が無い方含め、新しい環境に自ら身を置いて様々な人と関わることをお勧めします。

 

現在でもなお、自分に甘える事が多く自分軸の確立もできていません。語学力もまだまだなので留学生活としてはかなりスロースタートだと思います。それでも少しずつ成長していく自分を実感できているので、この留学を通して自分を成長させ、これまでお世話になった方達に社会貢献という形で恩返しができたらと思います。


共同研究の先生と
インターンシップで来ている留学生と
ベルギー近辺の友人と


読んで頂きありがとうございました。

佐賀大学工学系研究科二年
石井寿斗

 



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