0. 農学研究科修士1年・山津良太からの挨拶
「どーも!どーもどーもどーも!ヤマツでございます!私は今、タンザニアに来ております!」自然の宝庫と呼ばれるタンザニアは、アフリカ大陸の東部に位置しています。この留学日記では、アフリカでの留学を決意した背景や、文部科学省主催の「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム」の奨学金制度に応募するまで、そして現地での留学の様子をお伝えします。これを読めば、留学の虜にされ、アフリカに移住してしまうことは間違いないでしょう。
(左) 研究チームの一員 (中央) バレー部に参加 (右)近所の友達
1. 留学のきっかけ
大学2年の時に訪れたインドネシア・バリ島で、地球の「広さ」と「狭さ」を実感したことがきっかけです。多宗教国家であるインドネシアでは、歴史的建造物と近代技術が融合する街並みに触れ、多様な文化や価値観の「広さ」に強い衝撃を受けました。それと同時に、日本からわずか6時間で行ける距離に地理的な「狭さ」も実感しました。この経験から、日本だけで人生を終えるのはもったいないと感じ、国境を越えて活躍できる人材になりたいと思うようになりました。
2. タンザニア0円留学(4カ月)
皆さんは、文部科学省が主催する「トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム」という奨学金制度をご存じでしょうか。これは、成績や語学力を問わず応募できる返済不要の奨学金で、民間企業の寄付によって運営されています。日本の未来を担う“グローバルリーダー”を育成し、留学を通して社会課題の解決や産業創造に貢献できる人材を育てることを目的としています。この制度は、十分な語学力や資金がなく、社会にインパクトを与えたいという強い想いだけ持ち合わせている私にぴったりでした。もちろん倍率は高く、綿密な計画と社会的意義のある留学内容が求められますが、挑戦しなければ一生後悔すると思い、応募を決意して、有難いことに採用していただきました。
トビタテ!留学JAPANは英語力・成績は問われないため誰にでもチャンスがあります。
3. Youは何しにタンザニアへ?
私は大学で、ゴミを活用して作物を育てる「有機養液栽培」という未来の農業技術を研究しています。ゴミ(畜産廃棄物や産業廃棄物)を微生物の働きによって分解し、栄養豊富な水を作り、その水に根を浸して作物を育てる技術です。化学肥料に頼らず、水の使用量も最小限に抑えられる持続可能な方法として注目されています。日本は、化学肥料の原料をほぼすべて輸入に依存しており、国際情勢の悪化や資源枯渇が進めば、安定した農業生産が難しくなる可能性があります。こうした背景から、化学肥料に代わる持続可能な農業技術の一つとして、研究が進められています。
私は、この技術が干ばつ(水不足)や化学肥料依存に悩むタンザニアにも有効だと考え、現地での実証実験に挑戦しました。現在は、日本人一人で現地の人々と協力しながら、現地での有機養液栽培の研究を行っています。
(左)ゴミから作った栽培養液 (右)実際に有機養液栽培でレタスを育てている様子
4. 気になるタンザニアの衣食住
【衣:全身2000円コーデ】
欧米人やアジア人は「裕福」という印象を持たれやすく、身の安全のためにも高価なものは身に着けないようにしています。毎日、全身2000円コーデ生活をしており、あえてケチケチした言動を心掛けています。60円の服を値切ったり、100円のブレスレットを買うのをためらったりしています。タンザニアはアフリカの中で比較的安全な国とされていますが、強盗やスリの被害も時折発生するため油断はできません。そのため、常にダミーのスマートフォンと財布を携帯しています。
【食:平均200円/食】
普段は学食を利用しており、「ワリニャマ」と呼ばれる牛肉入りのライスがお気に入りです。昼も夜もこのメニューを食べることが多いです。物価が非常に安く、瓶コーラは約60円、フルーツ盛り合わせは約100円と手ごろで、誰でも贅沢を楽しめます。ケンタッキーやピザ、ハンバーガーなどのファストフードも気分転換に利用しており、価格も安く手軽に楽しめます。こんなことをしていたら、友人達から「ジャパニーズリッチマン」と呼ばれるようになってしまいました。
(左)ビーフ&ライスとフルーツ (右)こんな感じの学食で食事しています
【住まい:家賃1万2000円/月】
大学構内の一軒家をガーナ人の学生とルームシェアしています。間取りは2DKです。ときどき個人商店で牛肉を購入し、自炊もしています。ただし、水回りのにおいが強く、お湯も出ないため、キッチンでお湯を沸かして桶に移し、そのお湯を汲んで体を洗っています。
【その他観光名所】
タンザニアには世界有数の国立公園があり、サファリツアーでは野生のライオンやゾウ、ハイエナなどを間近で見ることができます。また、「アフリカのハワイ」とも呼ばれるザンジバル島では、透き通ったエメラルドブルーの海を眺めながらバカンスを楽しむことができます。
5. タンザニアでの研究活動
タンザニアでの研究では、私は研究の指揮官として、すべての工程を自ら主導しています。研究資材の調達や設計、栽培室の施工管理、物資の手配まで、自分でマネジメントを行い、ラボメンバーの力も借りながら現場を動かしています。研究以外でも、友情を深めたり語学力を高めたりするために、部活動やイベントに積極的に参加し、さまざまな人との交流を楽しんでいます。もちろん、計画が思うように進まなかったり、日本では考えられないトラブルが発生したりすることもあります。しかし、そんな時に友人へ相談すると、必ず誰かが助けてくれます。以前、研究が行き詰まった際に9人に電話をかけまくったところ、9人全員が補助してくれたため、供給過多で逆に困りました。
(左上)対照実験のために化学肥料を農家の方に分けてもらいました。
(左下)現地の農家に訪問し、技術の共有やインタビューを行っています。
(右上)白衣を着ると汗が止まりません。
(右下)施工管理もやりました。人生で一回は現場監督やりたかった。
6. 奨学金制度の選考と留学準備にかかる費用
奨学金制度に興味がある方、アフリカに留学する予定がある方は必見です。
【奨学金制度の選考日程】
2024年12月2日 トビタテ奨学金への応募開始
2025年2月28日 トビタテ応募書類の提出締め切り
2025年5月18日 文部科学省にて個人面接40分・グループ面接70分
2025年6月20日 奨学生として採用通知
【留学準備】
2025年6月26日 ワクチン1回目
2025年7月3日 ワクチン2回目
2025年7月5日 オンラインVISA申請
2025年7月8日 オンラインVISA取得
2025年7月24日 ワクチン3回目
2025年8月1日 留学開始
2025年12月1日 留学終了(予定)
航空券は往復で約26万円、ビザ取得費用は300ドル(約4.6万円)、ワクチン接種には約11万円かかりました。いずれも費用と時間がかかるため、早めの準備を強くお勧めします。ワクチンについては何を接種すべきか分からなかったため、母子手帳を持参し、問診時に医師へ相談して決めました。ワクチンは一定の間隔をあけて複数回接種する必要があるので、少なくとも出発の1か月半前には病院を受診すると安心です。
また、トビタテ!留学JAPAN第17期生として採用された場合、留学準備金として35万円、さらに生活費として月12万円が支給されました。これらの支援金から、航空券やビザ、ワクチン、生活費などの費用をまかなうことができます。
7. 伝えたいこと
留学を考えている方へ
留学では、考えられないような出来事に出会うことがあります。不便なことや困難なことにも多く直面します。その困難に対して、自分がどう感じ、どう行動するかを客観視してみると、日本では気が付かなかった自分に気が付くと思います。「留学で価値観が180度変わった」とよく言われますが、それは自身の価値観をしっかりと自認しており、その変化にも気が付ける留学生が感じることだと思います。留学は、自分自身を深く知る機会を強制的に与えるものであり、自分を知ることが今後の人生で必ず生きてくると思いますので、できるだけ多くの学生が留学に行けることを願っています。
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